[要点整理]
・正味運転資本=売上債権+たな卸資産−仕入債務
・正味運転資本は、会社が日々活動するために必要な運転資本のことです。
正味運転資本とはどのようなもの?
正味運転資本は、売上債権とたな卸資産の合計から仕入債務をマイナスして求めます。一般的には、正味運転資本というのは、流動資産から流動負債をマイナスしたものを定義している場合が多いです。
■正味運転資本=流動資産−流動負債
そして、この金額が大きければ会社の資金繰りが安定しているとされています。しかしながら、流動資産から流動負債をマイナスしたものを正味運転資本といってしまうと、正味運転資本に現金や預金が含まれてしまいますので注意が必要です。
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具体的には、実際は運転資本はマイナスであっても、流動資産の現金や預金に長期借入金から調達した分が含まれてしまうと、流動資産が、実際よりも過大評価されて計上されてしまうことになるのです。
そのような場合、実際は運転資金が不足しているのに気が付かないということになりかねません。なので、運転資本を分析する際には、流動資産と流動負債のうち、現金や預金は除いて、日々の営業活動に関する資産項目を抜き出して行うことが大切です。
■売上債権
・売掛金、受取手形、完成工事未収入金などです。
■たな卸資産
・棚卸商品、原材料、販売用不動産などです。
■仕入債務
・買掛金、支払手形などです。
正味運転資本の目安はどれくらい?
正味運転資本は大きければ大きいほど、会社が自由に営業活動やその他に使用できますので、会社の成長発展が期待できます。なので、プラスであれば、資金繰りにも問題ないと予測できます。
ただし、注意しなくてはいけないのは、売上債権の中に不良債権がある場合、またたな卸資産のなかに不良在庫がある場合です。売上債権とたな卸資産が滞留していると、正味運転資本が増えているように見えるからです。
売上債権の場合は早期回収を、またたな卸資産については不要な在庫を圧縮するなどの努力が見られるかどうかがポイントになってきます。当然ですが、正味運転資本が少ない、あるいはマイナスの場合は短期の支払いが困難になる可能性がありますので問題です。
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なぜ運転資本は少ない方がいいの?
運転資本とは、次のような計算式で算出できます。
■運転資本=売上債権(売掛金+受取手形)+棚卸資産−仕入債務
まず売上債権が増えるということは、製品を販売した時に現金を受け取らない掛けが増えることを意味しますよね。他方で、仕入債務が増えるということは、原材料を仕入れてた際に現金を支払わない掛けが増えることを意味します。
つまり、売上債権が増えれば現金の受取りが遅延し、仕入債務が増えれば現金の支払いが遅延します。これは、売上債権が増えれば営業活動上のキャッシュ・インフローが減り、仕入債務が増えれば営業活動上のキャッシュ・アフトフローが減るということです。
さて、上記の計算式からわかるとおり、正味運転資本の増加額を低く抑えることは、債務に対する債権(棚卸資産を含みます)の割合を大きくしないということです。つまり、これはキャッシュの先払いを少なくするということに他ならず、正味運転資本増加額が小さいほど資金的に有利になるということなのです。
ですから、仮に取引額が増えたとしても変動がない方がよく、仕入れ債務とのバランスが重要になってくるのです。実際、多くの会社は業界慣習などもあり、正味運転資本の増減はほぼ変わらない傾向にあります。
資金繰りを考える際には、この計算式からプラスならその分の資金を事前に準備しておく必要があると考えればいいのです。また、計算式から数値が小さくなるように検討することは、資金の余裕を作りだすことにつながります。
なお、正味運転資本は、売上げとの相関が強いので、売上げ何日分のように用いるケースも多々あります。
ちなみに、正味運転資本の売上日数については、日本の会社の平均はプラスの日数になっていますが、米国のIT企業などではマイナスの日数になっているケースも少なくありません。これが、米国のIT企業が強い理由の1つと言えるのかもしれませんね。
正味運転資本と運転資本の定義の違いは?
■正味運転資本=流動資産ー流動負債
■運転資本=売上債権+棚卸資産ー仕入債務
キャッシュが多いほど経営の安定には良いですよね。ですから、運転資本の「売上債権+棚卸資産」の部分は、直ちにキャッシュにできなかった資産なので、少なくしていく方がよいことになります。
他方、正味運転資本というのは、それのみで良し悪しを判断することは難しいです。なぜなら、正味運転資本というのは「運転資本+短期純金融資産」だからです。
つまり、運転資本は少なくしていった方がよいものですが、短期純金融資産は増やしていった方がよいものなので、その合計額である正味運転資本では、判断がつきにくいからです。